テキスト文章

下品な記事を書かないと死ぬ、と組織に脅されて仕方なく書いています。

フルート

イタリーに行こうとしましたが肌身離さず持っていたいフルートがありません。
ないのでいけなくなりました。「きっとわたしはイタリーに行けば間違いが正されると本気で思ってるわけじゃないんだ。だけどだからってほかにどうすることができるだろう。イタリーに行くことが出来て、それが選択肢の一つならば、わたしはイタリーへ行くことを迷わない」
どうしようもありません。ラタフルートを隠したのはあいつです。あいつが現れました。そう、あそこにいるのはあいつでした。あいつがあそこにいて、柱を背に立っていたクランドゥエを見ていたのです。
「あいつ。奇遇だね」
あいつはしばらく笑いを堪えてから堪えるのを止めて笑い出しました。愉快ですね。
しかし何も言いません。
「わたしのフルートを知っている」
それを聞いてあいつはポケットからラタフルートを引きずり出して地面に叩きつけて二つに割れたところを足で蹴飛ばしました。
「それはまさか」
ばらばらになったラタフルートはばらばらで、もうイタリーには行けません。
「わかっているくせに、は。わからないふりするんだ。はは」
「あいつ」
「おまえはなにもできないんだな。は。何もしないふりをしたりなにもみえないふりをしたり自分に関係ないことに触れないのは本当に何もできないからだ。はは。何も出来ないおまえは何もしないで物事が円滑に運べば良いといつも思っている。ははは」
「どうしてこんなことするんだよ」
「おまえの存在を否定してやる」
クランドゥエは何も出来ませんでした。この身勝手なおんなをなぐってなぐってなぐりたおして緊縛してろうそくなどで精神的に責めたい願望はもちろん持っています。
持っていてもしませんでした。自分は山本あいつの仰るとおりだとクランドゥエは思っていました。
何をしたらいいのかもわからず相手の反応を待っていることしかできないクランドゥエはイタリーに行くしかないと思って空港へ行きましたが持ってきたはずのラタフルートがないので行けません。
「きっとわたしはイタリーに行けば間違いが正されると本気で思ってるわけじゃないんだ。ただそうするしかないだけ。消去法で選択された消極的決定に、貫き通す覚悟は存在しない」
そのとき離れた場所でねこが爆発する音が聞こえました。