テキスト文章

下品な記事を書かないと死ぬ、と組織に脅されて仕方なく書いています。

もう誰の声も聞こえなくなった。

もう誰の声も聞こえなくなった。
うっかり洩らしたため息を机の引き出しにしまっておいたら出掛けて帰ってきたときに人間になっていて話しかけてきた。
いまでは二人で暮らしています。
ため息は変な時間に寝たり起きたりするので彼に合わせて食事の時間を調節している。あさ、早めの目覚まし時計が鳴る前にため息が僕を起こす。

ため息はいつも身体に乗って夢を見ている僕の肩を揺さぶる。「ひーひーんひひーん」
「うまじゃないだろ。うまはのられているぼくのほうで、のっているきみはうまじゃないうまにのっているひとのほうだから、ひひーんというのはぼくであって、きみがひひーんというのはまちがっている。なにかいうのならば、ぼくにひひーんというように説得するか、それともうまにのっているひとがするようなことをするのがただしい。ぼくはよくしらないが、むちでぶったり、あしでけったり、ハイヨーといったりするのではないだろうか」
黒くて大きな瞳は僕に似ている。眉毛は耳の方が低くて、いつでも情けない顔に見える。いままでもこれからもため息がなければ僕は生きていられなかった。